私の故郷は青森県黒石市というところで、娯楽と呼べるものは一切存在しない、カラオケボックスもないような街です。
そんな黒石市には毎年帰ってるんですが、私は家庭事情がいろいろあり実家そのものがないので、帰省と言いながらも宿を取ります。ほとんど旅行。
そこで、今回泊まった黒石市の中村旅館が最高だったので、ちょっとその話をしようと思う。
中村旅館は黒石市の裏通りにあり、築なんと120年。私が子供の頃からずっと同じ形で存在している。宿泊するのは今回が初めて。

実はこの旅館、元々は遊郭だっだものを改装したものである。旅館がある裏通りは昔の遊郭街だったそうで、この辺の町名も「浦町」という。当時の「裏町」が改名されたものと思われる。
その話は、去年帰省したときに市内の喫茶店のママさんから聞いた。私も知らなかった地元の歴史だ。


浦町にはあちこちに遊郭の建物があったそうだが、現在も形を留めているのはこの中村旅館一軒のみ。旅館の中は隅々まで掃除が行き届いており、大切に保ってきたことが伝わってくる。

玄関を入るとすぐ、朱色の階段が現れる。聞くところによると、ここに遊女が並び「顔見せ」を行なっていたという。当時はもっと赤々としていたことだろう。現代の階段とは違い角度が急なので、酔っ払って踏み外したらしっかり転がり落ちる。注意。

遊郭だった当時は、もっとあちこちに装飾が施され豪華絢爛だったことだろう。
釘隠しという、釘を隠すために柱に打ち付けられていた金属の飾りがあり、それがときどき遊郭に来た客に盗まれていたという。現在も釘隠しは残っているが、確かに剥ぎ取られたと思われる後がいくつかあった。



中村旅館は、昔ながらの日本家屋のため、トイレ、お風呂、水場は共同。お風呂は温泉ではなく少し広めの浴槽。希望した時間にあらかじめ沸かしておいてくれるというシステムだ。宿泊した日は地元の友達と飲みにいく予定があったため、お風呂は夜の11時にしていただいた。

部屋にはエアコンがなく、扇風機のみ。青森県と云えど8月は暑い。しかし、この建物は窓が多くて風通しが良く、扇風機だけでも十分涼しかった。

中庭から夜風が入ってくるので涼しい。黒石市の夜は恐ろしく静かで、鈴虫の泣き声だけが響き渡る。

廊下はこんな感じで、宿泊部屋を囲むように一周できる。木の床は歩くたびに軋み、最近はあまり聞くことのない古い木造建築独特の懐かしい音がする。

中村旅館は素泊まりコースと朝食つきのコースがあり、私は朝食付きにした。腹持ちのいい朝ごはんで、とても美味しかった。
黒石市は街中にコンビニがないので、泊まるなら朝ごはんはアリがおすすめ。

帰省時、普段はビジネスホテルを利用していたけど、こうした昔ながらの旅館に泊まることで日本人本来の暮らしを思い出すことができたような気がする。黒石市は私が子供のころからあまり変わっていない。人口もどんどん減っている。けど、この歳になって、変わらないということの良さが少しだけわかるようになった。だからこそ家がなくてもときどき帰りたくなるんだなあと思う。故郷がチェーン店ばっかになってたら寂しいもんね。
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